今回は、イオンなどのスーパーへ買い物に行くとよく流れている「呼び込み君」風のBGMについてお話します。
スーパーの店内でよく耳にする、あの「ポポーポポポポ」という軽快な音楽。
実はちゃんとした曲名があるってご存じでしたか?
その名も、「No.4」!
呼び込み君にはもう1曲、「No.2(ボサノバ調)」も収録されていますが、やっぱりお店で一番耳に残るのはこの「No.4」だなーと感じます。あのメロディー、ほんと天才的ですよね。聴いているだけで楽しい気分になって、つい多めに買い物してしまう魔力すらあります。
さて、そんな「呼び込み君のBGM」を動画に使いたい、という人も多いと思います。私自身、ショート動画などにピッタリなフリー音源になる!と思い、「呼び込み君風BGM」を自作してみたことがありました。
原曲と比べてメロディは意識的に変えているけど、音色や雰囲気で「感じる」なという出来。
しかし、色々調べた結果……
これは公開できないということが判明!(お蔵入り)
呼び込み君の原曲には著作権があるため、動画などに無断で使用するのはNGです(使用している人もいますが、許可を取っていない場合は著作権侵害です)。
発売元である「群馬電機株式会社」さんの、よくある質問にも回答がのっていますのでご確認ください。
メディアへの掲載や呼び込み君のコンテンツとしての使用、楽曲などに関しましては個別にお問い合わせ下さい。
楽曲の商用利用はできません。引用元:群馬電機株式会社|よくある質問
そのため、呼び込み君の楽曲を使用したい場合は、どのように使用したいのか案件の詳細を開示して、許可を取る必要があります。
じゃあ、自分で1から作ったらいいじゃん!と思うかもしれませんが、「原曲」ではないオリジナル曲でも、実はNGなんです…(゚Д゚;)
呼び込み君「風」のオリジナルBGMは使えない
完全なオリジナル曲でも、以下のような「呼び込み君っぽいBGM」は、著作権的にグレーです。
呼び込み君の原曲ではなくてもNGな理由
- 元ネタを明示している(例:「呼び込み君のNo.4風な曲です!」)
- 聞いた人が「これは呼び込み君っぽいな」とすぐ連想するレベル
- 原曲の特徴的な要素(テンポ・リズム・構成)を強く踏襲している
つまり…
「自分の曲」だけど、勝手に使えないし、元の著作権者(呼び込み君No.4の権利者)の許可が必要だし、無許可で使えば著作権侵害になる可能性があるってことですね。
残念過ぎる…
けど、まだ納得できないという方は、ちゃんと読み進めていただければと思います。
呼び込み君風のオリジナルBGMを公開できない理由
呼び込み君を真似て作ったオリジナルBGMでも、公開してはいけないのは、著作権だけの問題ではないんです。群馬電機さんのサイトを見てみると、このように書かれています。
弊社は「呼び込み君」という文字列について文字商標(商標登録第4423682号等)を、楽曲「No.4」については音商標(商標登録第6608744号、9類[携帯式デジタル音声再生機、音声による電子広告表示装置])を保有しております。
引用:https://www.gunmadenki.co.jp/whats-new/notice/yobikomikun_onegai
呼び込み君を真似て作った「それっぽいBGM」であっても、公開や使用には注意が必要。
これは単に「似ているからダメ」という話ではなく、著作権とは別の“商標”という法律の問題が関係しています。
商標とは、「商品やサービスの出どころ(ブランド)を表すマークや名前、音など」を保護するための制度です。たとえば、「スターバックス」や「ユニクロ」といったブランド名やロゴは、無断で使えませんよね。これは商標権で守られているからです。
実はこれ、「音」にも当てはまります。
ちょっとややこしく感じるかもしれませんが、できるだけわかりやすく説明しますね。
文字商標ってなに?
文字商標とは、特定の商品やサービスに使われる「文字・単語・フレーズ」を、他人が勝手に使えないように法律で保護する制度です。
たとえば
- 「呼び込み君」
- 「コカ・コーラ」
- 「iPhone」
- 「スターバックス」
などは、すべて商標登録された「文字」です。
これらを商業的に無断で使うと、商標権侵害にあたる可能性があります。
商標権の目的は大きく2つあります。
- 企業やブランドの信用を守ること
- お客さんが“だまされない”ようにすること(混同の防止)
たとえば、「呼び込み君」という名前の商品が2社から出ていたら、どちらが本物かわからなくなりますよね。それを防ぐために、商標は「この名前はこの会社のものですよ」と明確にする役割を持っています。
文字商標のNGな使い方(例)
「呼び込み君」が文字商標登録されている以上、以下のような使い方はNGになります。
使用例 | 商標的にアウト? | 理由 |
---|---|---|
自作のBGMに「呼び込み君風BGM」とタイトルを付けて配布・販売 | ❌ | 名前を自分の商品に流用しており、群馬電機の商品と誤解されるおそれあり |
「呼び込み君リスペクト作品」と銘打って映像作品を公開 | ❌ (注意) | リスペクトと明記しても、一般の人に“公認”と誤解させたらNG |
「呼び込み君(非公式)」と付けて販売 | ❌ | 「非公式」と書いても、名前を勝手に使っている時点で商標権侵害の可能性あり |
文字商標でもOKな使い方(参照的使用)
商標はすべての使用が禁止されているわけではありません。以下のような「参照的使用(正当な引用的利用)」はOKです。
使用例 | OK? | 理由 |
---|---|---|
ブログ記事で「呼び込み君の歴史を解説」 | ✅ | 群馬電機の商品であると明示された文脈ならOK |
YouTubeで「呼び込み君を使ってみた」レビュー | ✅ | 正規品をレビューする内容であればOK |
Twitterで「呼び込み君がスーパーで流れてて楽しい」 | ✅ | 商業目的でなければ、通常の言及は問題なし |
音商標ってなに?
音商標とは、特定の商品やサービスを表す「メロディやジングル、音のフレーズ」を、他人が勝手に使えないように法律で守る制度です。
たとえば、以下のようなものがあります。
- テレビ局のジングル(「ピンポンパンポン」みたいな音)
- 商品のコマーシャルで流れる短いメロディ
- 「呼び込み君」の「ポポーポポポポ」という音
これらは「音商標」として登録されている場合、他の人が似た音を使うと、商標権の侵害になる可能性があります。
音商標があるのは、以下のような理由からです。
- ブランドや商品を音で特定できるように守ること
- お客さんが“だまされない”ように、音での混同を防ぐこと
たとえば、「ポポーポポポポ」という音を聞けば「呼び込み君」が連想されるような場合、他者が似た音を使うとお客さんが混乱してしまうので、それを防ぐための仕組みです。
音商標でNGな使い方(例)
使用例 | 音商標的にアウト? | 理由 |
---|---|---|
「呼び込み君」の音に似たメロディを自分の作品に使う | ❌ | 混同を招くおそれがあるため、商標権侵害になる可能性あり |
ジングルや広告に「呼び込み君」の音を真似て使用 | ❌ | 本物と誤認される可能性があるため禁止されることが多い |
自作のBGMで「呼び込み君風」の音を意図的に使う | ❌ | 音そのものが登録されているため、使用は慎重に判断が必要 |
音商標でOKな使い方(参照的使用)
使用例 | OK? | 理由 |
---|---|---|
音商標の音を紹介・解説動画で流す | ✅ | 教育的・批評的な引用なら通常問題なし |
イベントで正式に許可を得て使う | ✅ | 事前に権利者の許可があれば問題なし |
携帯式デジタル音声再生機、音声による電子広告表示装置って?
群馬電機さんの音商標の登録対象には、「携帯式デジタル音声再生機」や「音声による電子広告表示装置」なども含まれています。
これは、たとえば
- スマホやタブレットなどで流れる「呼び込み君」の音声
- 店頭の電子看板やデジタル広告機器で流れる呼び込み君の音
などの用途も保護対象にしている、という意味です。
つまり、音が使われる機械や装置のジャンルまで含めて、その音を無断で使うことを防ぐ範囲が広く設定されているのです。
呼び込み君のフリーBGM音源をダウンロードしたい方へ
このように、呼び込み君の音源は、著作権と商標の両方で保護されています。
したがって、使いたい場合は
- 群馬電機さんに許可を取る
- 完全に独立したオリジナル曲を作る(呼び込み君を連想させない)
のどちらかが必要になります。
呼び込み君のBGMを使いたい方は、あの雰囲気が欲しいんだと思うので、そうなるとやはり「原曲の使用」について、群馬電機さんに用途を明確に説明した上でお問い合わせするのが1番確実だと思います。
「風」BGMでも、音や名前が似ていれば法律的にアウトになる可能性があるので、慎重に対応しましょう。呼び込み君の曲「No.4」は、聴くだけでワクワクする名曲ですが、その使用には著作権と商標の両方が関係しています。
「ちょっと似てるだけ」でも、場合によっては法律的な問題が発生しますので、音楽を作る側としてはきちんと理解しておきたいところです。